賃貸物件を借りるとき、住み替えのとき、退去のとき。相手が街の小さな不動産屋や個人の大家さんだと、いまも「この書類はFAXで送ってください」と言われることがあります。SUUMOやアットホームで小規模の物件を見ていると、取扱不動産会社の欄に電話番号とFAX番号が並んで載っていることも珍しくありません。事務所の複合機がそのまま連絡窓口になっているのです。
一方で借りる側の手元にFAX機はなく、コンビニまで走ろうにも夜間や休日は面倒。締め切りは今日か明日、というのがよくあるパターンです。
先にいちばん大事なところをお伝えします。不動産屋や大家宛にFAXで書類を送るときは、書類の種類ごとに「FAXで完結してよいもの」「FAX後に原本郵送が必要なもの」「そもそもFAXでは受け付けてもらえないもの」を分けて考えてください。入居申込書や修繕依頼書はFAXで完結することが多く、賃貸契約書や連帯保証人承諾書は原本の郵送とセットになるのが一般的です。この切り分けさえできれば、あとは送り先のFAX番号と送付状の書き方の話になります。
ここでは、賃貸のやり取りでFAXが使われる代表的な5つの書類 (入居申込書・賃貸契約書・退去届・修繕依頼書・連帯保証人承諾書) について、書類別の送り方と、判子・訂正印・原本の扱いをまとめます。FAX機がなくても、スマートフォンやパソコンから直接送れるオンラインFAXも選択肢のひとつとして紹介します。
まず確認する3つのこと
不動産屋や大家に書類をFAXする前に、この3つだけは押さえておくと後戻りが減ります。
- 送り先のFAX番号。物件案内チラシ・重要事項説明書の会社情報欄・契約書の末尾・管理会社からのハガキ、いずれかに書かれています。電話とFAXが同じ番号で兼用になっている個人の大家もいるので、「FAXで送っても大丈夫ですか」と一度電話で確認してから送るのが安全です。
- 担当者名と部署。小さな不動産屋は担当者名の書き分けが命綱です。「〇〇不動産 賃貸担当 〇〇様」まで送付状に書ききってください。管理会社が別会社になっている物件では、大家ではなく管理会社宛に送ることが多いので、契約時の書類でどちらが窓口かを確認しておきます。
- 原本の後日郵送が要るか。契約書・連帯保証人承諾書・住民票・印鑑登録証明書のように押印や公的発行のある書類は、FAXで先に送っても原本を郵送する運用が基本です。「FAXは審査や連絡を先に進めてもらうため、原本は後日郵送で」と理解しておくと、両方を忘れずに済みます。
このあたりを一度電話で聞いておけば、書類のやり取りで詰まることはほぼありません。夜間や休日に連絡が取れないときは、FAXと同時にメールで「先ほどFAXでお送りしました」と一言添えておくと、営業再開後に担当者がすぐ気付いてくれます。
入居申込書
入居申込書は、賃貸のやり取りでいちばんFAX頻度が高い書類です。物件が気に入って「押さえておきたい」と伝えたあと、不動産屋から所定の申込書 (紙またはPDF) を渡されます。氏名・生年月日・現住所・勤務先・年収・緊急連絡先・連帯保証人の情報を書き込み、免許証やマイナンバーカードの写しを添えて、FAXで返送するのが典型的な流れです。
小規模の不動産屋がFAXを使い続けるのは、申込書を受け取ったその足で保証会社 (家賃保証会社) にそのまま転送するためです。保証会社の審査もFAXやメールベースで動いていることが多く、紙で来た申込書を再入力するより、FAXで届いたものをそのまま転送するほうが早いのです。
送るときの実務ポイント
- 申込書は基本的に「写し」で受け付けてもらえます。原本は後日、内見や重要事項説明のときに持参する運用が一般的です。
- 免許証・マイナンバーカードの写しは、白黒コピーで問題ありません。ただしFAXは細字が薄れるので、番号や氏名が判別できるか送信前に一度目で確認してください。
- 勤務先の情報や年収は、審査で最初に見られる項目です。空欄や「後日連絡」は避けて、正確な数字を書きます。
- 連帯保証人の情報 (氏名・続柄・生年月日・勤務先・年収) を書く欄がある場合、事前に本人に承諾を取ってから記入します。あとから「聞いていなかった」となると審査がやり直しになります。
賃貸契約書
賃貸契約書 (賃貸借契約書) は、押印して返送する段階でFAXが使われることがあります。ただし、原本の郵送や来店提出とセットになるのが基本です。
重要事項説明 (宅建業法上の義務) は、対面またはIT重説 (ビデオ会議) で完了させたうえで、後日、契約書と重要事項説明書に署名・押印して返送する流れが一般的です。押印した契約書をFAXで送ると、不動産屋側は先に社内保管用のコピーとして扱い、原本は郵送で受け取ってから正式ファイリング、という運用になります。
契約書そのもののFAX送信で気になる論点 (法的有効性・押印と手書き署名の扱い・原本の残し方・電子契約への切り替え) は、契約書をFAXで送る方法 にまとめてあります。賃貸契約もこの記事の考え方をそのまま当てはめられるので、押印まわりで迷ったらそちらを参照してください。
送るときの実務ポイント
- 押印は認印でも実務上通用しますが、契約書に「実印」と明記されているときは実印を押し、あとで印鑑登録証明書の原本を郵送します。
- 契約書の写しをこちら側でも1部残します。FAX送信前にスマートフォンで撮影しておくと、後日の照会にすぐ対応できます。
- 送付状には「賃貸契約書 (署名捺印済) 送付・原本は本日郵送しました」と1行入れておくと、担当者が郵送到着まで待たずに社内手続きを始められます。
退去届 (解約通知)
賃貸を退去するときの退去届 (解約通知書・明渡し通知書とも呼ばれます) は、FAXでの送信を認めている管理会社・大家が多い書類です。契約書の解約条項に「解約日の1か月前 (または2か月前) までに書面で通知」と書かれているのが一般的で、書面の通知手段としてFAX・郵送・持参のいずれかが指定されています。
書き方の基本
- 契約者氏名・物件名・部屋番号・契約者連絡先
- 解約希望日 (契約書の通知期間に合わせる)
- 立ち会い希望日時 (第一希望・第二希望)
- 転居先住所と敷金の返金先口座
- 鍵の返却方法 (立ち会い時に手渡し / 郵送 など)
退去届の書式は管理会社ごとに違うので、まず管理会社から所定用紙を取り寄せる (郵送 / FAX / メール) のが確実です。所定用紙がなく自作でよいと言われたら、上記の項目を漏らさず書けば通用します。
送るときの実務ポイント
- 通知期間は解約希望日から逆算して確実に間に合わせます。1か月前通知の物件で届く日が遅れると、次月分の家賃が発生することがあります。FAXの送信日を通知日として扱うかどうかは、管理会社の運用で違います。FAX送信後に電話で「本日FAXで退去届をお送りしました」と受領確認を取っておくのが安全です。
- 退去届を送るタイミングで、次の入居者募集が動き出します。立ち会い希望日を書かずに送ってしまうと、日程調整のやり取りで数日が消えます。第一希望・第二希望を書いておいてください。
- 敷金精算の書類はこの後に別便で届きます。原状回復ガイドラインの範囲を超えた見積が来たときの反論材料として、契約時の入居時チェックリストと室内写真を手元にそろえておきます。
修繕依頼書
修繕依頼書 (修理依頼書・修繕連絡票) は、水漏れ・エアコン故障・給湯器の不調・鍵の紛失といった住みながらの不具合を管理会社に伝える書類です。電話が第一報、FAXが記録として残る補足連絡、という使い方が普通です。緊急の水漏れや停電のように現場対応が要る事案は、電話とFAXを併用し、電話で状況を伝えたうえで写真付きの依頼書をFAXするのが確実です。
書き方の基本
- 契約者氏名・物件名・部屋番号・連絡先電話
- 不具合の発生日時 (「今朝から」「昨晩から」など)
- 具体的な症状 (「洗面所の給湯栓を開くと水が漏れる」「エアコン室外機から異音」など)
- 立ち会い可能日時 (第一希望・第二希望)
- 応急処置の有無 (「元栓を閉めた」「バケツで受けている」など)
送るときの実務ポイント
- スマートフォンで不具合箇所を撮影し、A4に貼り付けてFAXすると、修理業者への説明が早くなります。FAXは白黒2値化されるので、写真は輪郭がはっきり見える角度で撮ります。
- 「修理業者から折り返し連絡」の運用が基本です。管理会社が業者を手配し、その業者から入居者に直接電話が入るので、日中に電話が取れる連絡先を書きます。
- 賃貸物件の修繕費用の負担区分 (貸主負担・借主負担) は、原因によって分かれます。故意・過失によるものは借主負担になる可能性があるので、原因が思い当たる場合は依頼書にそのまま書いておくと、後の請求で揉めにくくなります。
連帯保証人承諾書
連帯保証人承諾書 (連帯保証人引受承諾書) は、賃貸契約に連帯保証人を立てるときに、保証人本人が署名・押印して提出する書類です。近年は保証会社の利用が主流になり、個人の連帯保証人が省略される契約も増えましたが、家族に連帯保証人を頼む従来型の契約はまだ多く残っています。
この書類は、判子と原本の扱いが厳しくなる代表例です。保証人の実印を押し、印鑑登録証明書 (発行から3か月以内が原則) を添えて、原本を郵送するのが基本です。FAXは「先に承諾の意思表示を届けたい」「原本の郵送前に不動産屋に内容を確認してもらいたい」といった事前送付として使われます。
送るときの実務ポイント
- 実印は認印と異なり、印影のかすれや欠けが後の照合で問題になります。押印は落ち着いて、朱肉をたっぷりつけて垂直に押します。書き損じたときは、その用紙は差し替えて再発行してもらうほうが安全です (訂正印での修正は、賃貸契約書の付属書類としては避けたほうが無難です)。
- 印鑑登録証明書はFAX送信では意味を持ちません。市区町村の朱印と登録番号が刻まれた原本に効力があるので、必ず原本を郵送します。FAXで写しを送るのは「承諾書の記入例として担当者に確認してもらう」程度の用途に限ってください。
- 承諾書に押した印影と印鑑登録証明書の印影は同一である必要があります。事前にA4のコピー用紙で試し押しをして、書類本番用の用紙に同じ強さで押します。
判子・実印・署名まわりの一般的な扱いは、署名入り書類をFAXで送信する方法 にもまとめています。
訂正印と書き損じの扱い
賃貸まわりの書類で書き損じたときの対応は、書類の種類で分かれます。
- 入居申込書・修繕依頼書・退去届: 二重線を引いて訂正印 (認印) を押し、上に正しい内容を書けば通用します。FAX送信前に、訂正箇所が判別できるかを一度目で確認します。
- 賃貸契約書 (押印済): 契約成立後の一方的な訂正は避けます。金額や日付の誤りに気付いたら、担当者に電話し、契約書を差し替えて再度両者で押印し直すのが原則です。
- 連帯保証人承諾書: 書き損じは訂正印で直さず、新しい用紙で書き直します。
書き損じが多い書類をFAXで送ると、担当者側で「これは原本もこう書かれているのか、それとも清書したのか」の判断が要り、電話での確認往復が発生します。清書して送り直すほうが結果的に早いです。
写しか原本か
書類別に、どこまでFAXで完結してよいかの目安をまとめます。
| 書類 | FAXで完結 | 原本を郵送 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 入居申込書 | ○ | 通常不要 (来店時に持参) | 保証会社への転送が目的 |
| 免許証・マイナンバーカードの写し | ○ | 不要 | 文字が判別できるか確認 |
| 賃貸契約書 (押印済) | △ (仮受付) | ○ | 原本郵送が基本、FAXは先行送付 |
| 重要事項説明書 (受領後) | △ | ○ | 契約書に準じる |
| 退去届 | ○ | 管理会社の指示による | 電話での受領確認を推奨 |
| 修繕依頼書 | ○ | 通常不要 | 写真添付を推奨 |
| 連帯保証人承諾書 (押印済) | △ (事前送付) | ○ (実印+印鑑登録証明書と併送) | 原本主義 |
| 印鑑登録証明書 | × | ○ | FAXでは意味を持たない |
| 住民票 | × | ○ | 原本の朱印に効力 |
「原本主義」の書類 (印鑑登録証明書・住民票・戸籍謄本など公的発行) は、FAXで送っても審査には使えません。原本を郵送してください。写しの提出でよいと言われた場合でも、公的書類はコピーではなく原本を郵送するのが安全です。
送付状 (かがみ) は必ず1枚目に
不動産屋や大家宛のFAXでは、送付状が最初の目印になります。小さな不動産屋では担当者が受け取ったFAXを担当物件別に振り分けているので、送付状で誰宛の何の書類かがすぐわかるようにします。
送付状に入れる基本項目は次のとおりです。
- 宛先: 不動産会社名・担当者名 (分かる場合は「賃貸担当 〇〇様」まで書く)
- 送信日
- 差出人: 契約者氏名・物件名・部屋番号・連絡先電話・メール
- 送信枚数 (送付状を含めた総枚数)
- 用件 (「入居申込書 送付」「退去届 送付」「修繕依頼書 送付」など1行)
- 補足連絡 (原本を郵送予定・折り返し電話希望・写真あり など)
書式の詳細と例文は FAX送付状の書き方ガイド にまとめています。急いで送りたいときは、印刷してすぐ書き込める A4送付状テンプレート が便利です。
FAX機がないときの送り方
自宅にFAX機がない場合、不動産屋や大家に書類を送る方法は現実的に2つです。
1. コンビニのマルチコピー機
セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートのマルチコピー機からFAXが送れます。国内向け1枚50円 (2026年6月時点)。24時間営業の店舗が多いので、深夜や早朝でも対応できます。
入居申込書や退去届のように1〜数枚で完結する書類は、コンビニで十分間に合います。ただし、修繕依頼書に写真を添える場合や、契約書のように10枚を超える書類では、マルチコピー機の前で原稿を差し替える手間がかかります。手順の詳細は コンビニFAXの送り方 にまとめています。
2. オンラインFAX (PayPerFax)
もうひとつは、自宅のパソコンやスマートフォンから直接送る方法です。書類をPDFにして (紙で受け取ったものはスマートフォンのスキャンアプリでPDF化して)、アップロードして送信します。コンビニに行く必要はなく、深夜や悪天候でも自宅から送れます。
PayPerFaxは、契約不要・月額料金不要の従量課金制オンラインFAXです。料金は、最初の3ページが$2、追加ページは1ページあたり$0.75です。入居申込1件、退去届1件だけの単発利用でも使えます。
書類のPDFをアップロードし、不動産屋や大家から案内されたFAX番号を入力するだけ。アカウント登録も、月額契約も必要ありません。
送信確認と控えの残し方
書類を送ったあとは、届いたことを確認して、控えを残します。入居申込・退去・修繕対応が「届いた・届いていない」で止まるのを防ぐためです。
- 送信レポート: PayPerFaxはブラウザ上に送信結果を表示し、送信レポートPDFをダウンロードできます。コンビニのマルチコピー機は、利用明細を紙で発行します。どちらも「送信元の機器から相手のFAX番号への通信が成立したこと」の記録です。相手先のFAX機で用紙切れやインク切れが起きていた場合、こちら側では「成功」と表示されることがあります。詳しくは FAX送信確認 を参考にしてください。
- 不動産屋への受領確認: 送信後に「先ほどFAXでお送りしました。届いておりますでしょうか」と電話しておくと安心です。個人の大家宛の場合は、留守番電話にメッセージを残すか、後日改めて電話します。
- 控えの保管: 送付済みの書類は、入居・退去・修繕対応が完了するまで手元に残しておきます。原本を郵送する書類は、こちら側でコピーを1部残しておくと、後日の照会にすぐ対応できます。
よくある質問
個人の大家に直接FAXしても大丈夫ですか?
契約書や案内書に大家のFAX番号が書かれていて、そこに送るよう指示されているのであれば問題ありません。管理会社が別会社になっている物件では、大家ではなく管理会社宛に送るのが原則です。契約時にどちらが窓口かを確認しておいてください。
FAX番号が電話兼用でした。送ってもいいですか?
小規模の個人事業主や大家では、電話とFAXが同じ番号で兼用になっている場合があります。「FAXで送りたいのですが、番号は同じで大丈夫ですか」と一度電話で確認するのが確実です。切替は多くの場合、事務所側で受話器を上げてFAX受信モードに切り替える必要があります。
入居申込書をFAXで送ったあと、審査結果はいつ来ますか?
保証会社の審査は早くて即日、通常は2〜4営業日ほどで結果が出ます。申込書に不備があった場合、不動産屋から追加書類の依頼が入るので、日中に電話が取れる連絡先を書いておいてください。
退去届は本当にFAXでいいのですか?
契約書に「書面で通知」と書かれていて、書面の手段としてFAXが指定または許可されていれば、FAXで問題ありません。ただし、通知期間の起算日 (FAX送信日か、担当者が確認した日か) が管理会社によって違うことがあるので、FAX送信後に電話で受領確認を取り、「本日付で退去届を受理した」と口頭で確認しておくのが安全です。
連帯保証人承諾書はFAXで済みますか?
原本の郵送が必要です。実印と印鑑登録証明書がセットで意味を持つ書類なので、FAXは事前確認 (記入例の照合など) までにとどめてください。承諾書の内容だけを担当者に事前に見てもらいたい場合は、印影を伏せた状態でFAXしても差し支えありません。
まとめ
不動産屋や大家にFAXで書類を送る場面は、賃貸のやり取りではいまも普通に発生します。運用面で押さえておきたいポイントは次のとおりです (書類ごとの「写しか原本か」は前掲の表を参照してください)。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 送り先 | 物件案内・重要事項説明書・契約書末尾に書かれた番号 (電話兼用の場合は一度確認) |
| 担当者 | 「〇〇不動産 賃貸担当 〇〇様」まで送付状に書ききる |
| 送付状 | 1枚目に必ず添える (宛先・部署名・物件名・部屋番号・用件) |
| FAX機がないとき | コンビニ (1〜数枚) / オンラインFAX (深夜・多枚数・PDF送信) |
| 控え | 送信レポート + 電話での受領確認 + 書類の写し保管 |
FAX機を用意する必要はありません。PayPerFaxなら、入居申込書や退去届のPDFをアップロードするだけで、パソコンからでもスマートフォンからでも、不動産屋や大家のFAX番号へ送信できます。
