司法書士に相談する前に、まず自分で法務局に一度FAXで送ってみたい。あるいは、登記の申請中に法務局から補正指示の電話がかかってきて、「回答書はFAXで送ってください」と言われた。中小企業の経営者や個人が、法務局に何かをFAXで送りたくなる場面は、意外とよくあります。
先にいちばん誤解の多いところをお伝えします。登記の本申請 (不動産登記・商業登記・法人登記) を、法務局はFAXでは受け付けていません。原本主義と、登記官による本人確認・書面の真正性確認の仕組みがあるためです。
ただし、それですべてが「FAX不可」というわけではありません。補正指示への回答書、簡易な照会、追加の添付資料の追送など、管轄の法務局によってはFAXでも受け付けてもらえる細い経路があります。ここでは、何が送れて何が送れないか、管轄の法務局のFAX番号の探し方、そしてFAX機がないときの現実的な送信手段までを整理します。
法務局にFAXで送れないもの・送れる可能性があるもの
まず全体像です。実務上の目安として、次のように分かれます。
FAXでは送れないもの (原則、書面か登記・供託オンライン申請システム経由)
- 不動産登記の申請書 (所有権移転、抵当権設定・抹消、相続登記など)
- 商業登記の申請書 (設立、役員変更、本店移転、解散など)
- 法人登記に関わる各種申請書
- 登記事項証明書 (履歴事項全部証明書、登記簿謄本) の交付請求
- 印鑑届出書・印鑑カード交付申請書
- 供託書の正本提出
FAXで受け付けてもらえる可能性があるもの (管轄法務局の運用による)
- 登記官から交付された補正指示に対する回答書
- 登記完了予定日・進捗の簡易な照会
- 申請中の書類に付随する追加の添付書類 (原本は別途郵送や窓口持参が必要)
- 簡単な問い合わせ・書式に関する質問
「送れる可能性がある」という書き方をしているのは、法務局ごとに運用が微妙に違うためです。管轄の法務局に電話一本で「これはFAXで送っても差し支えありませんか」と確認するのが、いちばん確実な進め方になります。
なぜ登記の本申請はFAXでは受け付けないのか
制度側の話を、少しだけ補足します。
登記手続きは、書面での申請と、法務省が運用する 登記・供託オンライン申請システム (通称:登記ねっと) による電子申請の2つが正式な経路です。FAX送信は、この2つのどちらにも該当しません。原本の署名・押印・印紙の貼付と、登記官による受付・審査・完了通知という一連の手続きは、紙の原本または電子証明書つきの電子データを前提に設計されています。
法務省は、令和以降、商業登記・不動産登記のオンライン申請を段階的に拡大していますが、書面申請の窓口・郵送受付も引き続き残っています。「FAXを廃止するから電子申請へ」という話ではなく、そもそもFAXは登記手続きの正規経路として想定されていない、というのが実情です。
つまり法務局の受付でFAX不可なのは、法務局の職員の怠慢からではありません。制度の仕組みそのものが、原本の受付と電子申請の2択を前提に組まれているためです。
一方で、現場では補正指示への回答や追送資料など「本申請そのものではないが本申請に付随するやり取り」が発生します。ここでは、電話・郵送・FAX・持参のうち、いちばん早いのがFAXであることも多く、実務では今もFAXが動いています。制度と現場のあいだのこのギャップに、この記事のテーマがあります。
管轄の法務局とFAX番号を確認する方法
管轄の法務局や支局のFAX番号は、法務省の 法務局管轄区域案内 から辿るのが最も確実です。
- 上記の管轄区域案内で、送りたい先の都道府県を選ぶ
- 表示される地方法務局または法務局のトップページを開く
- 「所在地」「連絡先」「アクセス」などのページから、代表番号を確認する
- 代表番号にまず電話し、「〇〇の件でFAXを送りたいのですが、FAX番号を教えてください」と案内をもらう
この最後の1ステップが実務上のポイントです。法務局の建物は本局・支局・出張所と分かれていて、FAX番号がホームページに直接掲載されていないケースもあります。事務の管轄 (登記事務、供託事務、人権事務など) によって受付窓口も違います。電話で「〇〇部の〇〇担当」に取り次いでもらってから、FAX番号を口頭で確認するのがいちばん確実です。
管轄が引っ越しなどで変わったとき、あるいは支局・出張所が統廃合されたときにも、この管轄区域案内から辿り直せば最新の情報が確認できます。古い名刺やホームページの番号を鵜呑みにせず、都度ここから確認してください。
送る前の最終チェックリスト
補正指示への回答や照会の書類をFAXで送るとき、事故が起きやすいポイントは決まっています。送信前に次を確認してください。
- FAX番号: 上の手順で今回確認した番号か。担当部署宛の番号か、代表FAXか
- 宛先: 「〇〇法務局 〇〇部 〇〇様」まで書き切っているか (共有FAX機で他の書類に混ざらないため)
- 件名 (用件): 「〇〇 (申請番号 XXXX) の補正指示に対する回答書」など、届いた側がひと目で紐付けできる情報か
- 枚数: 送付状を含めた総枚数を明記しているか
- 原本の扱い: FAX後に原本を郵送するのか、原本は自社保管でよいのか、事前に電話で確認済みか
- 署名・押印: FAX上でつぶれない書体・濃度で押印しているか (10.5pt以上・黒インクが目安)
日本の商慣行として、FAXの1枚目には必ず送付状 (かがみ) をつけます。書式に迷ったら FAX送付状の書き方ガイド と、印刷してすぐ書き込める A4送付状テンプレート を用意しているので活用してください。
送ったあとは、念のため電話一本で「先ほどFAXでお送りしました。届いておりますでしょうか」と確認しておくと安心です。法務局の共有FAX機は、担当者の手元に届くまで少し時間差があります。締め切りが迫っている書類ほど、送信レポートだけに頼らず口頭確認を挟んでおいたほうが確実です。
FAX機がないときの送信方法
自宅やオフィスにFAX機がない場合、法務局へFAXで送る現実的な手段は2つあります。
1. コンビニのマルチコピー機
セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートのマルチコピー機からFAXが送れます。国内向け1枚50円 (2026年6月時点)。24時間営業の店舗が多く、深夜や休日の締め切り前でも動けるのが強みです。
書類を自宅で印刷・押印してからコンビニに持ち込み、マルチコピー機で1枚ずつ差し替えながら送信します。10枚を超える書類だとやや手間がかかります。海外のFAX番号には送れません。手順の詳細は コンビニFAXの送り方 を参考にしてください。
2. オンラインFAX (PayPerFax)
もうひとつは、自宅のパソコンやスマートフォンから直接送る方法です。書類をPDFにしてアップロードするか、押印済みの紙をスマホで撮影してPDF化するだけで、そのままFAXとして法務局に送信できます。コンビニに行く必要はなく、深夜や悪天候でも家から送れます。
PayPerFaxで法務局へ送る
PayPerFaxは、契約不要・月額料金不要の従量課金制オンラインFAXです。補正指示への回答書1件だけの単発利用でも使えます。
料金は、最初の3ページが$2、追加ページは1ページあたり$0.75です。アカウント登録も、月額契約も、必要ありません。書類のPDFをアップロードし、管轄の法務局のFAX番号を入力するだけで送信できます。送信結果はブラウザに表示され、送信レポートPDFをダウンロードして手元に残せます。詳しくは FAX送信確認 を参考にしてください。
よくある質問
商業登記の申請書をFAXで送っても受け付けてもらえますか?
いいえ。商業登記の本申請は、書面 (窓口持参または郵送) か、登記・供託オンライン申請システム 経由の電子申請のいずれかに限られます。FAX送信では受け付けてもらえません。急ぎの場合は、郵送よりもオンライン申請のほうが処理が早く進むことがあります。
補正指示への回答をFAXで送ってよいと言われました。原本はどうしますか?
補正の内容によって扱いが変わります。単なる書類の記載漏れ・軽微な修正であれば、FAXでの回答書送信のみで足りるケースがあります。押印や印紙が必要な訂正の場合は、FAXで先に送ってから、原本 (訂正版) を郵送するよう指示されることが一般的です。電話で補正指示が入ったときに、その場で担当の登記官に「原本は必要ですか、必要な場合は郵送でよろしいですか」と確認しておくのが確実です。
登記事項証明書 (履歴事項全部証明書) はFAXで請求できますか?
いいえ。登記事項証明書の交付請求は、法務局の窓口・郵送 (交付請求書 + 収入印紙)、または 登記・供託オンライン申請システム 経由に限られます。FAXでの請求は受け付けていません。オンライン請求だと窓口・郵送より手数料も安く、自宅や事務所で受け取れます。
相続登記に必要な書類をFAXで送ってもよいですか?
相続登記の本申請 (登記申請書、遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書等の原本) は、FAXでは受け付けてもらえません。書面提出または電子申請が原則です。ただし、申請中に補正指示が出て、追加の書類 (例:委任状のコピー、追加の戸籍情報など) を先行してFAXで確認してもらえるケースはあります。この場合も、原本は別途郵送または持参が必要です。
供託関係の書類はFAXで送れますか?
供託 (弁済供託、担保供託など) の本申請そのものはFAXでは受け付けていません。供託書の記載内容や添付書類の確認など、事前の照会段階でFAX対応してもらえる法務局もあります。詳しくは、管轄の法務局供託課へ電話で確認してください。
まとめ
法務局にFAXで書類を送れるかは、書類の種類と場面によって答えが変わります。目安として、次のように整理しておくと迷いにくくなります。
| 場面 | FAXで送れるか |
|---|---|
| 登記本申請 (不動産・商業・法人) | 不可 (書面 or 登記・供託オンライン申請) |
| 登記事項証明書の交付請求 | 不可 (窓口・郵送 or オンライン) |
| 印鑑届出書・印鑑カード交付申請 | 不可 |
| 補正指示に対する回答書 | 管轄法務局によっては可 (事前に電話確認を) |
| 進捗照会・簡易な問い合わせ | 管轄法務局によっては可 |
| 追加提出資料 (原本は別途) | 管轄法務局によっては可 |
| 供託の本申請 | 不可 |
管轄の法務局のFAX番号は 法務局管轄区域案内 から辿るのが確実です。番号だけホームページで見つからないときは、代表番号に一度電話して、担当部署に取り次いでもらってから確認してください。
FAX機を用意する必要はありません。PayPerFaxなら、書類のPDFをアップロードするだけで、パソコンからでもスマートフォンからでも、法務局のFAX番号に送信できます。
